ドラえもんのひみつ道具「バショー扇」はバショーせん? バショーおうぎ?

【記事内に広告を含みます】

表題の件について結論から申し上げます。わかりませんでした!

好きな風を吹かせられる「バショー扇」というひみつ道具。筆者はずっとてんとう虫コミックスのルビに沿って「バショーせん」と読んでおりました。一方で大山ドラ時代に「バショーおうぎ」というタイトルでアニメ化されたことから、このようにお読みになる方も存在します。

一体どちらが正しいのでしょうか? 調べてみたら沼でした。

調査資料について

バショー扇の登場話「バショー扇の使いみち」は複数の書籍に収録されており、アニメ化もされています。今回は次の資料から読みを調査しました。書籍はすべて小学館出版です。

その結果はなんとまっぷたつ。

バショーせんを採用

  • てんとう虫コミックス
  • コロコロ文庫デラックス
  • ドラえもんひみつ道具完全大事典
  • ドラえもん最新ひみつ道具大事典
  • 水田わさび版アニメ「風をあやつれ!バショー扇」

メジャーなてんとう虫コミックスは「せん」を採用しています。それと時期的に一番新しく、最新研究が反映されている可能性が高い水田版アニメがこちらを採用しているのは大きいです。大山版のタイトルが「バショーおうぎ」だったのを把握していないわけがないでしょうから、理由があって変更した可能性があります。

筆者はせんが正しいと思っています。「バショー扇」の原典と思われる「芭蕉扇」という言葉は「ばしょうせん」と読むのが一般的と考えられるからです。(広辞苑第7版・大辞林第4版・日本国語大辞典第2版で確認)

また、作者が病気により不在だったため映画スタッフによる作品ではありますが、映画ドラえもん『のび太のパラレル西遊記』において敵方の羅刹女が「ばしょうせん」を使用しています。このことを踏まえると、バショーせんという読みのほうがドラえもん界では一貫した印象を得られるのではないでしょうか。

バショーおうぎを採用

  • 小学三年生1985年6月号(初出)
  • 藤子・F・不二雄大全集
  • 大山のぶ代版アニメ「バショーおうぎ」

初出が「おうぎ」とは驚きました。大山版アニメがおうぎなのも納得です。

バショー扇の話が単行本に初収録されたのは1987年のてんとう虫コミックスです。1985年に大山ドラでアニメ化されたときは雑誌掲載版しか存在しなかった。だから読み方は初出に従いおうぎだったのです。

全集がおうぎを採用しているのは初出重視だからなのでしょうか? しかし、全集も多くの研究を重ねて編纂された書籍です。全集が採用しているとなるとおうぎが正しい可能性も無視できません。

最後の手がかりは

各資料を比較する形で行った今回の調査では真実は不明ということになりました。しかし、本当の結論を得るための手がかりが残っています。原画です。原画にはもしかしたら作者がかなでセリフなどを記した部分があるかもしれません。藤子・F・不二雄ミュージアムで原画が展示される機会を心待ちにすることにいたします。

ドラワークス