ドラえもんの単行本のおすすめは? 各単行本の違いや特徴を解説

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1970年に連載を開始した漫画ドラえもん。その長い歴史の中で多くの本が出版されており、現行でも複数の種類の単行本が存在します。

たくさんの種類があるけど、結局どのコミックを買えばいいの? 何巻あるの? てんとう虫コミックスと大全集の違いは? 各単行本の違いや特徴について解説します。

はじめに

まず前提について解説します。単行本『ドラえもん』は傑作選となるため、原則として全作が収録されているわけではありません。

長期連載となったドラえもんには多数の作品があります。その中には低年齢向けでストーリーが簡素な作品、出来が良くない作品、後の設定と相違する作品などが存在します。このような作品は単行本に収録されない傾向にあります。

なお、例外的に、作者の全集として刊行された『藤子・F・不二雄大全集』については全作が収録されています。

おすすめ単行本

結論から申し上げますと、単行本はてんとう虫コミックスのみで十分です。その上で、どうしても作品としてのドラえもんをさらに楽しみたいという方のみ全集を入手すればよろしいかと思います。

てんとう虫コミックス(TC)

【短編1,093作を収録(重複17作を除く)、大長編17作を完全収録】

一番有名で、一番おすすめの傑作選です。TCシリーズの中にも種類がありますが、特に無印全45巻は作品テーマのバランスや季節感などを考慮した上で作者が自ら収録作を選定しており2、ほとんどの話が傑作です。

ちなみに筆者のイチオシは17巻です。次点で「さようなら、ドラえもん」と「台風のフー子」が収録されている6巻も外せません。もう少し挙げるなら12巻~22巻あたりは安定して面白い作品が多い印象です。

作者の没後、無印に収録されなかった作品がプラスシリーズとカラー作品集シリーズとしてまとめられました。TCシリーズは『ドラミちゃん』を除けば0巻に掲載されている2話以外に話の重複はありません。多くの話が読みたい方は『ドラミちゃん』以外の全巻をご購入いただくことをおすすめします。

大長編は17巻のねじ巻き都市冒険記までが作者存命時の作品です。作者没後の映画のコミカライズ版を含めれば全24巻となります。なお、映画のパラレル西遊記の原作は作者都合により存在しないため、収録されている単行本もありません。

藤子・F・不二雄大全集(全集)

【短編1,318作3、大長編17作を完全収録】

全集の最大の特徴は、ドラえもんが全作収録されているという点です。ドラえもんを読み尽くしたい方には必須の単行本になります。

その他にも、全集には主に次のような特徴があります。

A5サイズ:全集はコロコロコミックと同じA5版です。サイズがTCよりも大きく絵の細部を確認しやすいため、絵にこだわりのある方におすすめです。

加筆修正後の最終原稿を収録:TC収録後に加筆修正された作品については、修正後の最終原稿が収録されています。該当する作品は記事の最後に補足します。

学年繰り上がり編集:短編ドラえもんは基本的に小学館の『小学一年生』から『小学六年生』までの雑誌に連載されていました。全集ドラえもんは「学年繰り上がり」という方針で編集されており、当時の読者が読んでいたドラえもんを追体験できます。

たとえば、全集3巻では1963年生まれの方の小学校入学から卒業まで、つまりは小学一年生1970年4月号から小学六年生1976年3月号までに掲載されたドラえもんが1冊にまとめられています。

セリフの一部が本来の形に戻されている:前項の学年繰り上がり編集に関連します。雑誌掲載時ののび太は『小学一年生』では1年生、『小学六年生』では6年生というように、のび太たちの学年は読者と同じ設定でした。学年が明記されたセリフも雑誌版には存在します。

TCで修正されていたこのようなセリフは、全集においては雑誌版の表現に戻されています。詳しくは次の記事をご覧ください。

加えて、作者の意図ではない要因による改変を可能な限り本来の姿に戻すという方針4に基づき、諸事情により単行本で修正された表現(例:くるった→おこった5)が一部元に戻されています。それでもすべてではなく、逆に編集部により改めて変更された表現(例:クルパーでんぱ→おかしなでんぱ6)も存在します。

元原稿または雑誌複写(復刻)版を掲載:原稿を紛失したり、カラーの原稿をモノクロ印刷しなければならなかったりする事情で、TCではベース原稿がトレス版になっている作品があります7。全集では原則として元原稿を、原稿が見つからない作品については雑誌を複写または復刻したものを収録しているため、作者の本当の筆を楽しむことができます。

有名な最終回「さようなら、ドラえもん」は原稿紛失のため他の単行本ではトレス版が収録されていますが、全集4巻において雑誌復刻版が掲載されました。この作品が好きな方であれば、本物の綺麗な線に感動するでしょう

全集は完全版です。しかし、価格が高い、1冊が辞書級の厚さで読みにくい、全集でしか読めない作品は質が良くないなどの欠点もあります。

そもそも、全集を購入したくなるほど作品が好きな方なら、なおさら手頃なTCも手元に置いておきたくなるはずです。ですので、いきなり全集を買うのではなく、まずはTCをご購入することをおすすめします。

その他の現行単行本

以下の単行本は、特定の方針によりまとめられており、編集テーマや装丁などにご興味のある方向けです。そうでない方には原則としてTCシリーズのほうをおすすめします。

デジタルカラー版(DC)

【短編1,307作を収録】

カラーで大量のドラえもんを読みたいのであればこれ一択です。スキャナで取り込んだ原稿に後付けでデジタル彩色を施したものが収録されています。

ただし、この単行本は電子版のみで、また1冊の収録話が少なく単行本をすべて揃えると割高になるため、カラーにこだわりがなければTCまたは全集のほうが良いでしょう。

ほぼ全作が収録されておりますが、11作が未収録です。(未収録:ドラえもん未来へ帰るドラえもんがいなくなっちゃう!?ロボットのガチャ子ドラえもん対ガチャ子きょうりゅうが来たまほうのかがみおかしなでんぱ遊園地になる木はりええほんドラえもんじゅん番入れかわりそうちドラQパーマン

当サイトではデジタルカラー版の作品検索に対応していないため、各巻収録作品については小学館の公式サイトまたはドラワークス元データ(Excel)をご確認ください。

以下マニアックな情報です。実はこの単行本は全集の原稿がベースです。TC収録以降に加筆された一部の作品について、最終版が掲載されています。

学年別ドラえもん名作選(学年別)

【短編105作を収録】

ドラえもんは小学館の雑誌である『小学一年生』から『小学六年生』で同時連載されていました。セリフを学年に対応する学習漢字とし、掲載誌別に編集した単行本となります。特に低学年向けの作品がTC全45巻には少ないので、低学年のお子さん向けに購入しても良いかもしれません。

ただ、低学年でもTC無印を読めるお子さんは普通にいらっしゃる印象ではあります。また、TCカラー作品集も低学年向けの作品が多い上にカラーなので、そちらのほうが楽しめるような気がします。

コロコロ文庫(文庫)

【短編337作を収録(重複12作を除く)、大長編17作を完全収録】

文庫サイズの単行本で、短編は「恋愛編」「恐怖編」「しずか編」など、テーマ別の編集方針でまとめられています。

「ロボット編」にTC未収録作品が2話収録されているので、以前はこの作品を目的に購入する方もいました。ただ現在であればそこまで求める方に対しては全集を購入することを勧めます。

巻末に著名人または関係者による数ページの解説があります。スネ夫編 (肝付兼太氏) とのび太グラフィティ編 (小原乃梨子氏) に作者が少しだけ登場しますが、そこまで重要な情報ではなく、解説の資料的価値はほとんどありません。

参考:文庫テーマおよび解説者一覧(藤子・F・不二雄データベース様)

コロコロ文庫デラックス(文庫DX)

【短編247作を収録】

上の文庫版と同様にテーマ別の編集方針によるハードカバー文庫の単行本です。ただし、文庫版とテーマの重複が多いので、この編集方針が目的であれば作品数が多い普通の文庫版をおすすめします。なお、収録作品は1話を除きTC無印全45巻にもすべて収録されています8。ハードカバーの装丁が気に入った方向けの単行本になるのでしょうか。

ただ、次の巻末に掲載されている解説は作者に関するエピソードが多いので、ファンであれば一読する価値はあるかもしれません。

ドキリ風刺編(芝山努氏)/わくわく大自然編(菊池俊輔氏)/恐ろし怖~い編(楠部三吉郎氏)/0点&家出編(小泉美明氏)/ドキドキ冒険編(藤本匡美氏、日子氏、地子氏)

参考:文庫DXテーマおよび解説者一覧(藤子・F・不二雄データベース様)

以上、現行単行本の解説でした。今回は有名な単行本のみを取り上げましたので、これですべてというわけではありません。ですが、単行本を収集すること自体を目的としないのであれば、本記事で紹介した書籍以外を購入する必要はないと思います。

以下は補足として現在絶版の単行本を取り上げます。全集が刊行される前はTC未収録作品が多く収録されており、ファンの間で有名な単行本であることから紹介します。現在は全集で全作読むことができるので、基本的にご購入する必要はありません。

絶版単行本

藤子不二雄ランド(FF)

【短編832作、大長編9作を収録】

旧中央公論社から出版されたシリーズです。藤子不二雄先生(藤子不二雄A先生、藤子・F・不二雄先生)の当時の全集としての位置づけ9で出版されました。当時における単行本未収録作品が多かったことからお持ちになっているファンの方が多く、現在でも話題になることがあります。

ぴっかぴかコミックス(PC)

【短編241作、大長編1作を収録】

低学年向けシリーズ……のはずでしたが、未収録作品が何気に多く収録されていたのでマニアも購入していた印象があります。しかも、一部の作品が加筆前(雑誌掲載時)のままで掲載されているという意味でもマニア向けでした。

加筆前バージョンが掲載された作品は次のとおりです10。リンク先はドラワークス原作詳細画面になります。

ただ、初出版を読みたいのであれば、国会図書館などで雑誌を確認したほうが当時の雰囲気をより感じられて楽しいと思います。今はほぼデジタル化されていますが、それでも当時の勢いは伝わってきますよ!

カラーコミックス(CC)

  • 全6巻
  • 大長編全4巻(のび太の海底鬼岩城まで)

【短編102作、大長編4作を収録】

こちらも低学年向けでB5版、主に二色刷りカラーの単行本です。コロコロコミックから派生した単行本であり、海底鬼岩城まではコロコロコミックで連載されていた大長編の総集編としての役割も果たしていました。

補足:TC→全集で加筆修正された作品

全集では、TCと同一タイトルであってもコマが一部書き加えられている作品があります。例えば「台風のフー子」などが該当します。

これは、主に『藤子不二雄自選集』(1981)という単行本で加筆修正されたためです。修正後の最終版は全集やDCに収録されています。作品一覧は次のとおりです10。全集とTCの収録巻はタイトルクリックでご確認ください。

次の作品はコマの加筆はありませんが、しずかちゃんの表情が修正されています。

  1. ただし、0巻は加筆修正前の雑誌初出版を掲載[]
  2. てんとう虫コミックス『ドラえもん 0巻』 p.121[]
  3. 短編を全1,318作とするのは当サイト定義による。一方で藤子プロが監修していると思われる『Pen+ 大人のための藤子・F・不二雄(2012年10月1日号別冊)』(p.34. 阪急コミュニケーションズ)では、エピソード数を1,316作と定義している。想像するに、除外されているのは「ドラミちゃん」として発表された「じゅん番入れかわりそうち」としのだひでお氏の絵である「ドラQパーマン」でしょうか?[]
  4. 大全集各巻冒頭の「この全集に収録した原稿について」より。(『ドラえもん 1巻』p.8など)[]
  5. 「ドラえもんだらけ」(全集1巻TC5巻[]
  6. 「おかしなでんぱ」(全集3巻、雑誌版タイトル「クルパーでんぱ」)[]
  7. 最近の版のTCでは全集ベースの原稿に差し替えられています。MACC「決定版個人全集『藤子・F・不二雄大全集』が生まれるまで[後編]」[]
  8. のび太・しずか編収録「ドラえもんとドラミちゃん」はTCプラス4巻に収録。[]
  9. 「FFLを作った男たち」『NeoUtopia 15号』p.45. 1991. 嶋中行雄氏コメント[]
  10. 「藤子・F・不二雄単行本バージョン違いリスト」『NeoUtopia 51号』pp.40-47. 2011[][]
  11. 自選集未収録で藤子不二雄ランドでも加筆なし。もしかして生前未発表の修正でしょうか?[]

ドラワークス