スネ夫に弟がいた!? 消えたスネツグくんと再登場の経緯

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スネ夫には弟がいます。名前はスネツグくん。ニューヨーク在住のおじさんの養子となったため日本にはいないのですが、てんとう虫コミックス40巻スネ夫は理想のお兄さん」にて一時帰国した際のエピソードが描かれます。

当エピソードの掲載年は1984年。ドラえもんの連載開始から14年も経過しています。なぜこのタイミングで突然スネ夫の弟が登場することになったのでしょうか? それには裏話がありました。

初期作品に登場していたスネツグくん

じつは、スネツグくんは「スネ夫は理想のお兄さん」が初登場ではありません。連載初期の3作品に登場していたのです。当初はサブキャラクターとして活躍させるつもりだったのかもしれません。当時は名前も判明していませんでした。

登場話①「お化けたん知機(弱いおばけ)」(1970年6月)

のび太をびっくり箱で驚かせたり、オバケたちを利用したりと初登場話からスネツグくんは大活躍。本作はドラえもんの世界観が固まっていなかったころの話なので、オバケが普通に実在しているというのも興味深いところです。TCカラー作品集5巻などに収録。

登場話②「アリガターヤ」(1971年8月)

1コマのみの登場。当初のスネツグくんは生意気な設定でした。TCプラス3巻などに収録。

登場話③「お返しハンド」(1972年8月)

全集4巻に収録。連載開始から3年目の本作を最後にスネツグくんは姿を消しました。連載が続くにつれて作者が忘れたのか、設定が整理されいないものとされたのか定かではありません。

スネツグくんの復活

ではなぜ、12年の時を経てスネツグくんが復活したのか? その答えは中央公論社『藤子不二雄ランド ドラえもん』という書籍にありました。てんとう虫コミックスに未収録だった3作が収録され、1巻の巻末のキャラクター紹介にはスネ夫の弟の項目まであるのです。

この件でなにかトラブルがあったようです。当時の編集者は次のように語っています。

巻末のドラえもん百科でスネオの弟・スネツグを収録してスタジオからお叱りを受けたこともありました。藤本先生のもとに謝罪に伺うと「確かにこれは弟ですね。忘れていました。」とおっしゃった上、その半年後に新作でスネツグを登場させてくださったのです。

綿引勝美(2010)「綿引勝美さんインタビュー」『ネオ・ユートピア』Vol.49. p.66

(建前上の)作者の回答はなんと「忘れていた」とのことです。そして藤子不二雄ランドの読者へのファンサービスとして、スネツグくんが改めて登場したのでした。

再登場したスネツグくんはとても礼儀正しく、兄のことを尊敬する良いキャラクターとなっていました。アニメわさドラでも2回アニメ化(2006年2021年)されており、両方とも甲斐田ゆきさんが素敵に演じていらっしゃいます。ご興味のある方はぜひご覧ください!

情報提供のお願い

作者と編集者のやりとりについて、過去に存在したファンサイト『藤子不二雄atRANDOM』様に次の記載があります。

スネ夫は、藤子先生の頭の中では一人っ子であるという設定に既に変更されていたのです。藤子先生は、当時の藤子不二雄ランドの編集者に「設定を変えられては困る」と苦情を寄せたそうですが、この編集者も「でも、この話に出てくるのはどう見てもスネ夫の弟ですよね?」と反論。

よね「藤子不二雄FAQ Q17」『藤子不二雄atRANDOM』(リンク先はInternet Archive)

この出典が見当たらず困っております。もしご存じの方がいらっしゃいましたらTwitterまたはメールにて情報提供いただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

なお、藤子不二雄ランド刊行の前、コロコロコミックの1978年の5月15日号に「お返しハンド」、7月15日号に「アリガターヤ」が再録されています。このときは問題にならなかったのか謎です。

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